学会について

設立趣意書

 発達過程に生じる様々な障害は、子どもの生涯を通じた心身の健康に影響をおよぼし、生活全般にわたる支援が必要となります。作業療法はこれまで諸先輩達のご努力により、子ども達に対する支援を行う専門職として一定の役割を果たしてきました。しかしながら、近年は肢体不自由だけでなく、学習障害や注意欠陥・多動性障害、広汎性発達障害などの対象疾患の多様化、児童ディサービスや特別支援教育、職業支援など支援する場も広がり、作業療法士は新たな役割を構築する必要に迫られていると考えられます。

 こうした状況にあって、臨床家や作業療法を研究する研究者は、現実的な課題の解決に貢献できるような研究を行い、その結果を相互の研鑽を通じて知的財産として共有するとともに、積極的に社会に向けて発信していくことが求められています。また一方で、私たちはそうした責務を持っていると考えます。

 そこで私たち呼びかけ人は、上述のような研究の成果を持ちより相互の研鑽を行う場、知的財産として共有する場、情報発信の場として、日本発達系作業療法学会を設立しようと決意しました。

本学会では

  1. 年1回の学術集会の開催
    研究発表と各地域の実践を出し合い共有するための症例検討会の2本柱で行う
  2. 機関誌の発行
  3. 全国の実態調査や政策提言

以上の活動などを行っていく予定でいます。

多くの志を同じにする臨床家、研究者、養成校教員の皆さんがこの学会の設立に参集して下さることを願います。

世話人一同

会長あいさつ

「たどりつかない道であっても・・・」

日本発達系作業療法学会 会長 加藤 寿宏 
(京都大学医学研究科人間健康科学系専攻作業療法学講座)

 発達障害系作業療法学会の会長に就任しました、京都大学の加藤寿宏です。この学会の方向性を決めていく大切な時期での会長就任に少し後悔をしていますが、理事の皆さんは「物申す方」ばかりですので、危険な方向に向いたときには遠慮なく谷底に突き落としてくれるものと信じています。学会という公的な会に相応しくはないのですが、谷底に落とされる覚悟で、この学会に対する個人的な思いを綴ります。

 私のOTになるきっかけは、隣に住む脳性麻痺のAくんでした。痙直型四肢麻痺、光を感じるぐらいの視力、鼻腔栄養、酸素吸引と、今思えば約30年前に、家族と生活していたことは奇跡だったように思えます。田舎に住んでいればリハビリテーションも受けられず、ポジショニングやシーティングの考えもなかった時代です。

 Aくんの生活のほとんどは畳の上の布団でした。その上で背臥位で苦しそうに反り返っていたAくんが、お母さんに抱っこされた瞬間に微笑み、すっと緊張がぬけ、3分後には寝息を立てていることが、高校生の私にはとても不思議なことでした。Aくんのお母さんはAくんを抱っこしながら「うちの子は愛知県の中で一番しょうがいが重い」と笑いながら話していたことも、不思議なことでした。

 それから、半年ほど経ちAくんに弟が生まれました。二人そろって寝ているときに、弟が泣き出しお母さんに抱っこ、しばらくすると、それに呼応したかのようにAくんも苦しそうに反り返り、お母さんに抱っこ。兄弟そろってお母さんに抱っこされ、二人ともとても幸せそうに同じ表情をしていたことを今でも鮮明に覚えています。それを見たときに、「うちの子は愛知県の中で一番しょうがいが重い」と笑いながら話せる理由が、ぼんやりとわかったような気がしました。

 若い人から最近、「○○法ではなくOTとして、この子に支援を・・・」ということばをよく聞きます。一昔前に我々の先輩が、私たち第二世代に話してくれたことばと同じです。しかし、「このOTとして」ということば、頼もしさと危うさの両面を持っている気がして仕方がありません。「OTとは何?」「○○法とOTは相反するものなのか?」など、先輩の時代からずっと議論され、飲み会でもOTが集まれば必ず話題になるこの手の話はいくつかあります。しかし、先輩にいくら聞いても、どれだけ議論をしても、自分自身がいくら考えても未だにしっくりくる正解にはたどり着けません。このまま、たどり着かない気もします。最近は、たどりつかないと開き直り、OTはそれを探し続ける職業であると思っています。

 発達障害系作業療法学会は、「OTとは?」にこだわり、それを探し続ける学会でありたいと考えています。見つけ続けるには臨床も研究も必要となります。臨床の人は、学会やジャーナルに発表されている研究は自分たちの臨床に役立たない、と言います。私個人はOTに関しては「すぐれた研究者は、すぐれた臨床家」であり、「すぐれた臨床家はすぐれた研究者」であると思っています。

 研究を学ぶために臨床で働く人が大学院に進むことは、OTの発展のために重要なことであると考えます。しかし、日本では私も含め大学院を担当する多くのOTは臨床で働くOTを満足できる研究者になっていないのが現状です。しかし、これを裏から見れば、臨床で働く人が、研究できるレベルまで自分たちの臨床を深めていないという現実もあると思います。すぐれた臨床家は臨床で多くの疑問をもち、それを解決し続けるために研究を行い、それを臨床に還元していきます。臨床の疑問を研究できるレベルまでに精製していくには、自分の臨床をしっかりと見つめ直すことが不可欠です。私が大学にいながらも臨床にこだわる理由もそこにあります。発達障害系作業療法学会は、日本で乖離している臨床と研究を、それぞれの立場から近づけていく場にしたいと考えています。しかし、これもまた、たどりつかない道であり、それを探し続けることがOTなのかもしれません。

 たどりつかない道であっても、一人一人のOTが向く方向は同じはずです。自分の立ち位置が臨床にあっても研究であっても、経験が多くても少なくても、私のOTの原点がAくんとAくんのご家族であったように、一人一人の 「OTとしての思い」「対象者に対する思い」は同じはずです。

 たどりつかない道であっても・・・思いだけはもちつづける、そんな学会にしたいと考えています。

 

日本発達系作業療法学会規約

第Ⅰ章 総則

(名称)
第1条
本会は、日本発達系作業療法学会(The Japanese Society of Occupational Therapy for developmental disabilities)と称する。
(所在地)
第2条
本会は、札幌市中央区南3条西17丁目 札幌医科大学保健医療研究科 感覚統合障害学研究室内に置く。

第Ⅱ章 目的及び事業

(目的)
第3条
本会は、小児疾患および発達障害に対する作業療法に関する研究、会員相互の連絡と協力、内外の学会との連携を図り、発達障害系作業療法の発展に寄与することを目的とする。
(事業)
第4条
本会は、前項の目的を達成するため、下記の事業を行う。
  1. 全国大会(学術集会)の開催。
  2. 内外の諸学会との連絡及び協力。
  3. 会報、その他刊行物の発行。
  4. その他、本会の目的を達成するために必要な事業。

第Ⅲ章 会員

(会員の資格)
第5条
本会の会員は次の4種とし、議決権、選挙権等は正会員のみとする。
  1. 正会員  本会の目的に賛同して入会した個人
  2. 機関会員 本会の目的に賛同して入会した団体
  3. 賛助会員 本会の目的に賛同し、特別に援助をするために入会したもの
  4. 名誉会員 本会の目的達成に顕著な功績があったもので、理事会の推薦および総会の承認をえたもの
(入会)
第6条
本会の入会については、特に条件を定めない。
(会費)
第7条
会員は総会の定めるところにより会費を納めなければならない。
  1. 2.既納の会費は返済しない。
  2. 3.名誉会員は会費を徴収しない
(退会)
第8条
会員は、いつでも理事会に通告し、退会することができる。
  1. 2.2年以上会費未納の者は退会とみなす

第Ⅳ章 機関

(役員)
第11条
本会には下記の役員を置く。
  1. 理事 5名以上10名以内 うち会長1名、副会長若干名置く。
  2. 監事 2名
  3. 顧問 若干名
(理事及び監事の選任)
第12条
理事及び監事は、会員の中から選挙等の方法により選任する。会長、副会長は理事会において互選する。
(任期及び補充)
第13条
役員の任期は、3年とする。役員の再任は妨げない。
  1. 2.補欠により就任した役員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長)
第14条
会長は、本会を代表し、会務を統轄する。
(副会長)
第15条
副会長は会長を補佐し、会長に事故がある場合はその任務を代行する。
(理事)
第16条
理事は、理事会を組織し、会務を執行する。
(監事)
第17条
監事は、会計及び会務執行の状況を監査する。
(幹事)
第18条
理事会は、幹事を委嘱し、会務の執行を補助させることができる。
(顧問)
第19条
本会に、顧問若干名を置くことができる。
  1. 2.顧問の就任および退任は理事会にて選任し、委嘱する。
  2. 3.顧問は理事会の諮問に応ずる。
(総会)
第20条
会長は、毎年1回の通常総会を召集しなければならない。会長が必要と認めるとき、または会員の3分の1の請求があるときは、臨時総会を開かなければならない。
(議決)
第21条
総会の議事は、出席会員の過半数をもって決する。なお、やむを得ない理由により総会が開催できない場合は、書面若しくは電磁的方法を用いる。
  1. 2.採決はいずれの方法においても出席者もしくは投票者の過半数をもって決する。

第Ⅴ章 会計

(経費)
第22条
本会の経費は、会費、寄付金、及びその他の収入をもって当てる。
(予算及び決算)
第23条
本会の予算及び決算は、理事会の決議を経、総会の承認を得てこれを決定する。
(会計年度)
第24条
本会の会計年度は、毎年4月1日に始まり、3月31日に終わるものとする。

第Ⅵ章 規約の変更及び解散

(規約の変更及び解散)
第24条
本規約を変更し、または本会を解散するには、会員に3分の1以上または理事の過半数の提案により、総会出席会員の3分の2以上の同意を得なければならない。

第Ⅶ章 設立

(設立年月日)
第26条
本会の設立年月日は平成23年9月20日とする。

付則

(施行期日)
1.
この規約は、令和2年3月20日より施行する。
2.
会の事務全般に関する責務は以下の役員にあるものとする。
事務局長 理事より選任
会計   事務局長により任命

 

役員

会長 加藤 寿宏 関西医科大学リハビリテーション学部
副会長(編集委員長) 石附 智奈美 広島大学大学院医系科学研究科
副会長 鴨下 賢一 株式会社 児童発達支援協会 リハビリ発達支援ルーム かもん
理事 有川 真弓 千葉県立保健医療大学 リハビリテーション学科
理事 伊藤 祐子 東京都立大学 健康福祉学部
理事 岩永 竜一郎 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科
理事 黒澤 淳二 医療法人 ハートフリーやすらぎ
理事 小松 則登 愛知県医療療育総合センタ-中央病院
理事 笹田 哲 神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部
理事 仙石 泰仁 札幌医科大学 保健医療学部
理事 辻善 城 大阪赤十字病院附属 大手前整肢学園
理事(事務局長) 中島 そのみ 札幌医科大学 保健医療学部
理事 森田 浩美 世田谷区立総合福祉センター
幹事(編集委員) 小澤 恭子 広島国際大学 総合リハビリテーション学部
幹事 小玉 武志 北海道済生会 みどりの里
幹事 助川 文子 県立広島大学保健福祉学部
幹事 徳永 瑛子  長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科
幹事(事務局員) 中村 裕二 札幌医科大学 保健医療学部
幹事 東恩納 拓也 東京家政大学 健康科学部
幹事 吉田 雅紀 社会福祉法人 北海道療育園
幹事 米持 喬 大阪発達総合療育センター
監事 池田 千紗 北海道教育大学 札幌校特別支援教育専攻
顧問 宮口 幸治 立命館大学 産業社会学部・大学院 人間科学研究科

 

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